色覚野(しきかくや)
2018年2月にpixivに投稿したものです。
pixivに投稿翌日、オリジナル漫画のデイリーランキング123位、「共感覚」タグ人気順位(全期間)で3位になりました。閲覧くださった皆様ありがとうございました。
タイトルの「色覚野」は、「脳の中で色を感知する部分をイメージした言葉」(※)に「共感覚で描く春の野原」の意味を重ねています。
本作では次のものを私の共感覚で彩色しました。↓
●文字(全て)
●左右(駅名標の矢印)
●形状(雪印のマーク)
たいていの書記素色覚者は、幼い頃に知った文字ほど明るくカラフルに知覚しており、私もそれにあてはまります。そして、学んだ年齢が遅い文字ほどだんだん暗く、黒っぽくなっていきます(あくまで傾向。そうでない書記素色覚者もいる)。
なので、本作の2ページ目には当初、「爛漫」「薄霞」などの季語を大きな立体文字で入れていたのですが、どす黒くて気味が悪くなり、幼い頃に学んだ文字の季語に切り替えました。
爛漫も薄霞も、美しい春の情景を表していることばなのに、心に浮かぶのは非常に暗く重い、うす汚い色で、今さらながら共感覚の不思議さを実感しました。
なお本作では、1つの文字に2つの色を感じる場合、両方の色で描いています。例えば2ページ目の「虹」は、朱赤と鈍い緑が3:7ほどの比率になっていますが、これは私が「虹」という文字を意識したとき、朱赤と鈍い緑をこれくらいの比率で「同時に」感じるということです。
背景色によって文字の色が見えにくい場合は、文字に黒や白のフチどりをしてありますが、このフチの色は共感覚色ではありません。
また漢字では、空(薄い青)や桜(ピンク)など、意味するものの色に影響されている場合もあります。こういうのも「広義の共感覚」とする学者さんもいますが、私は「連想」として区別しています(・・・区別してるんですが、連想色がついてしまった字は二度と共感覚色が現れなくなるので、やむを得ず連想色にしてあります)。
ちなみに、本作はpixivで「共感覚」タグのほか「百合」タグで訪問・閲覧して下さる方が非常に多くいらっしゃいます。「百合」とは少女同士の恋愛のことで、「レズビアン」よりも淡く、はかない感覚のものです。
私は以前、姉弟相愛作品の中に共感覚の色文字を描きこんだことがあります(『ソラリア』)。
共感覚者は感受性過多で、ものごとの哀しさを過敏に感じてしまうタイプが多い・・・というか私の知る限りでは自分自身を含め、全員がそのタイプです。
今作と以前の「ソラリア」で、「百合」「姉弟相愛」に「共感覚」を重ねて描いたのは、禁断性愛が持つフェティッシュの裏の、ほわんとした哀しさ、はかなさと、共感覚は親和すると思ったからです。
====本作に挿入した歌====
◆「春がすみ たなびく山の さくら花 見れども飽かぬ 君にもあるかな」(3ページ)
平安時代の歌人・紀友則の和歌で、新古今和歌集に収録されています。現代風に訳せば「春霞がたなびく山の桜は、何度見ても飽きません。それと同じように、あなたに何度逢っても恋しさがつのります」
・・・という感じでしょうか。
◆「菜の花畠に入り日薄れ 見渡す山の端 かすみふかし・・・」(1ページ)
◆「春の小川は さらさら行くよ 岸のすみれや 蓮華の花に・・・」(1ページ)
2曲とも大正時代に発表された文部省唱歌で、作詞高野辰之、作曲岡野貞一とされています(発表当初に作者名が伏せられていたことなどから確証がないみたいです)
(※=眼の錐体細胞や桿体細胞から色の情報が脳に送られ、視覚野が感応しています)


