「意識」は からだの外で
何をしているのか
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少し脱線しますが、むかしは、目が退化しほとんど視力のない小型コウモリが、なぜ深夜に飛び回り、虫をつかまえられるのか、説明がつきませんでした。
しかし、「超音波」の概念が解明されると、コウモリがそれを使っていることが判りました。
飛行中に虫をつかまえて食べる種類のコウモリは、口から超音波を出し、対象物に当たって耳まで跳ね返ってくる非常に小さな時間を計算して、障害物や虫の存在を認識しています(反響定位、エコーロケーション)。
なので、目が退化していても、周囲の状況や獲物の虫をサーチできるのです。完全に目隠しをさせた実験でも、障害物を避けて高速で飛び回ったそうです。

▼田舎に行くと、夏の夕暮れ時によく見かける小型のコウモリ。目が見えないが、超音波の反響時間で周囲をサーチし、飛行中に虫を捕らえる。高速かつ非常に複雑な飛び方をするが、電線や樹木などに絶対ぶつからない。

デジカメより前の、いわゆる銀塩時代のカメラは、この超音波の反射を応用したオートフォーカス(対象物までの距離を自動で測り、レンズを動かして焦点を合わせる)機能を持っていました(現代のデジカメのオートフォーカスは別の仕組み)。
ですから、心眼も、今は解明されていないものの、いずれはコウモリの超音波のように、盲目の人が無意識下で何をしているのか、説明される日が来ると思います。
* * * *
・・・・さて、懐疑派の私をぶちのめして観念させた体験ですが、これがもう心眼と呼ぶしかない、非常にはっきりしたものでした。
眼科手術を受けた日の晩、一度だけですが、もうあんなのは二度も三度も起きてほしくないです。
私を危機から救ってくれた体験なので、ありがたいのですが、それでもやはり、思い出すと、今も背筋のあたりがヒンヤリします。
私の眼は、先天的異常を持っており、白内障の手術は通常よりかなり難しくなりました。
開口部も大きく、術後は絶対に目を開けないよう指示されていました。眼球内に雑菌が入り「眼内炎」を起こすと失明の懸念があるからです。
しかし、その時の私は、顔の皮膚炎もひどく、注意しながら消毒する必要がありました。
さらに当時は多発筋痛と気管支炎も悪化していました。
深夜に風呂場で顔面の消毒をしようとしたとき、多発筋痛の激痛で、私は転倒してしまいました。
その拍子に、消毒液やガーゼなど、一式を置いた場所が分からなくなりました。
寝ている妻を呼ぼうにも、気管支炎による呼吸困難で声が出ません。
もちろん目も開けられません。
このときの絶望感といったら!
18の病のうち、やっと1つを手術しても、他の病のために結局それもムダになるのかよ!
そんなふうに運命を呪いかけたとき、突然、浴室内の光景がサーモンピンクの線画でくっきりと見えました。
術後ずーっと、まぶたをギュッと閉じっぱなしなのに、です。
これには仰天しました。
共感覚の色文字のように心に浮かぶのではなく、これは肉眼で見ているのではないかと思うほど、鮮明に見えました。
驚いている場合ではないので、線画の中から消毒薬などを探しました。
湯船のフタの上にそれを見つけ、手を伸ばすと、手の輪郭と、腕まくりした袖口が視界(いや、実際に肉眼視してはいないから『ビジョン』か)の下部からヌーッと、動く線画で現れました。
そして、目的のものを手にした瞬間、ピンクの線画はスッと消えました。
こんなはっきりした不思議体験があるものなんだ、と、我ながら呆れました。だって、あまりにも鮮明過ぎて、不思議と形容するのが憚られるほどでしたから・・・。